特選農家紹介

2017.05.24 | 特選農家紹介

(株)フリーデン(神奈川県)

フリーデンは2012年の第61回全国農業コンクールで名誉賞を受賞。推薦され、参加したその年の農林水産祭(農水省など主催)では、最高賞の「天皇杯」を獲得しました。大谷康志社長に、企業理念や商品のこだわりなどについて聞きました。

「良質な動物性タンパク質が必要となる時代が必ず到来する」
戦後復興の中で、新しい養豚の姿を求めた創業者

 ――日本で初めて一貫生産システムを導入したきっかけは

大谷:創業者たちは、戦後の復興が急激に進む様子を見て、「将来、日本人には良質な動物性タンパク質が必要となる時代が必ず到来し、養豚は新しい事業になる」と確信し大量飼育にチャレンジしたそうです。
当初、肉豚500頭の肥育農場を立ち上げ、様々な農場で生まれた子豚を購入しましたが、購入することで生じる病気の問題に直面しました。一貫生産システムは、そのリスクを避けるため、当時米国で行われていた三元輪番方式(三つの原種の相互交配)による繁殖から肉豚出荷というやり方にたどり着いたのです。米国での実践モデルですから、風土の違いによる設備や管理方法など、さまざまな問題が発生。試行錯誤の末、独自のノウハウを確立することができました。

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取り扱う精肉は全て農場HACCP認証の自社生産もの
「安心・安全・おいしさ」が企業理念 徹底的な安全管理も

 ――商品のこだわり、品質管理についてお聞かせください

大谷:フリーデンは「安心・安全・おいしさ」を企業理念に掲げています。その理念を実践するために、徹底した品質管理をし、信頼確保に努めています。
農場では、定期的な検査を行い、高い衛生レベルの維持に努めるとともに、部外者の農場入場に対する制限や、出荷車両の検査など「他から病気を持ち込まない、持ち出さない」ことを目的に、衛生管理をしています。
また近年、新型インフルエンザが社会問題となったケースでは、獣医師と相談した結果、養豚場から新型インフルエンザが発生しないように、全農場の従業員と全飼養豚に、インフルエンザワクチンの接種を義務付けました。
自社で取り扱う精肉はすべて、農林水産省の推奨する「農場HACCP」の認証を受けた、自社農場で生産された豚肉のみとしています。ISO9001認証を取得した伊勢原工場では、その豚肉を使ったドイツ伝統製法で加工品を製造しています。

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飼料用米「やまと豚米(まい)らぶ」で肉質向上!高付加価値の豚肉生産へ

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大谷:また、2003年から国の農業政策とも呼応し、家畜専用飼料用米の実現にむけ研究する産官学連携の「飼料用米プロジェクト」に着手しましたが、この飼料用米で育てた高付加価値の豚肉を作り出すことに成功しました。 この飼料用米を新ブランド「やまと豚米(まい)らぶ」と名づけ2008年から出荷していますが、肥育段階で飼料米を与えると、悪玉コレステロール値を下げるといわれるオレイン酸が増え、肥育後期にトウモロコシの15%を飼料米で代替すると、硬くしまりのある肉質に変化します。脂がさっぱりしているのに旨みがあると高い評価を得ています。


オリジナルブランド「やまと豚」 ネーミングは「日本を代表する豚肉でありたい」

 ――2001年から販売を始められたオリジナルブランド「やまと豚」のネーミングの由来は

大谷:社内公募などをして提案されてきたものの中から選定しました。「どの時代においても日本を代表する豚肉でありたい」という創業からの想いが表現されているネーミングとして採用しました。


飼料用米プロジェクトで次世代の担い手育成
福島に新工場建設、事故後の活性化の一助に

 ――今後の取り組みや地域貢献などについてお聞かせください

大谷:飼料用米プロジェクトも2014年度には、耕作放置地や休耕田を主とした作付け面積が、100haまで拡大しました。飼料用米栽培は、休耕田の復活や耕種農家の安定的な収入源の位置づけはもとより、中山間地の保水機能維持や、JAの設備活用など地元貢献と地域の活性化と、次世代の担い手の育成にもつながっています。 また、東日本大震災で、福島県の農場などは、原発の影響で長らく営業を休止していましたが、現在、ハム工房都路の新工場と直売所を建設中です。これが完成することにより、原発事故後の地域の活性化の一助になればと考えています。 今後については、「命あるものに接している」という姿勢を原点として忘れず、「安心・安全・おいしさ」を追求するフードチェーン(農場から食卓まで)としての使命を果たしていきたいと思います。

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プロフィール

frieden_plofile_photo.jpg(株)フリーデン社長:大谷 康志さん

第61回全国農業コンクール名誉賞(農林水産大臣賞・毎日新聞社賞)
1948年7月3日生。フリーデンの創業は1960年。農家がたい肥を取るために1、2頭の豚を飼っていた時代に新しい産業としての養豚業を目指し、日本で初めてとなる多頭肥育一貫生産システムを導入。 その後、加工工場や直営レストランなども設けるなど、生産から加工、流通、販売までの一貫システムに拡充・強化。現在、北関東と東北に4直営農場と6提携農場に種豚および肉豚を生産し、自社ブランド 「やまと豚」として、年間27万頭の肉豚を出荷する。飼料用米の作付けは、休耕田・耕作放置地などの活用で地域活性化と農地保全にも役立ち、稲作農業と畜産業との連携によって新たな事業を生み、担い手 の活躍できる場を創出。また、発展途上国から留学生を受け入れるため、奨学金制度(東京農業大学・修士コース、原則として帰国後養豚関係の仕事に従事)を2008年に設けるなど、意欲的な社会貢献にも取 り組んでいる。従業員数約300人。臨時雇用も含めると500人近くになる企業養豚のトップランナーをけん引する。